人の認識や意図に注目した円滑なコミュニケーションの検討

Image of components of different opinions.

前回の記事「自分の意見は自分の認識や価値観から構成されている」という考え方を紹介しました。

今回はその議論を発展させ、「認識や意図に注目したコミュニケーション」について考えていきます。

人の認識や意図に注目することで、他者との意見の原因を違いを見極め理解するのが容易になります。

もう一段掘り下げると、他の人の意見の構成要素を分解し整理したり、相手の主張の構造を理解し、根拠や仮説といった諸要素の検証を論理的に行うことができるようになることが期待できます。

前提として押さえておくべき前回の内容は「ある人の意見はその持っている情報や選択肢から構成したものである」ということだけです。

前回記事はこちらですが、この前提を把握しておけば必ずしも確認の必要はありません。

それでは、早速見ていきましょう。

要点の整理

はじめに要点を整理してしまいます。

本記事の主題は、「良いコミュニケーションのためには相手の見ているものを理解しよう」です。

主なポイントは次の3つです。

  • 誰かの意見の構成を理解するためには、その人が持っている認識や選択肢を知る必要がある
  • 要素としては問題の捉え方・選択肢・価値基準および知っていること・仮説・論理構成がある
  • 他人の認識や情報、論理展開を正確に理解するのは難しいが、うまく見極めよう

文字にするまでもなく、ごく当たり前のことかもしれません。

本記事はその当たり前のことを「自分の意見は自分の認識や価値観から構成されている」ということから整理してみたものであると捉えていただければ幸いです。

他者の意見や認識範囲に注目する方法

要点は紹介してしまいましたので、ここからは少し噛み砕いた整理を行います。

繰り返しにはなりますが、本記事では相手の意見や考えは、相手が知っている情報や選択肢、価値基準などに基づいているという考え方を基礎にしています。

自分のことと相手のこととの違いは、相手の場合は何を考えているかは正確には分からないことです。
そのため、ここからは「相手に関する情報が限られている」ことに注目して考えを深めていきます。

改めて個人の意見の構成を図で確認しましょう。今回は制約条件を問題の理解に含めています。

図1. 自分の意見が形成される際に利用している情報についての概念図.

以前の記事でこの図を考えた際は「問題に対してアイデアを出す」という簡単な問題設定でした。
分かりやすいので、今回もこの設定を使って考えてみたいと思います。

まず、ある問題に対して相手が出した意見を理解するには、次の要素を把握する必要があります。

  • 相手は問題や制約をどのように理解しているか
  • 相手が選択肢として持っているものは何か
  • 相手の目的や判断基準・価値基準はどこにあるか
  • 各構成要素をどのように結びつけているか

注意点は目的を価値基準に入れているところです。

後述しますが、目的が問題解決なのか、情報伝達や共感なのか、あるいはこちらに意図を掴ませないようにしたいのかなどで相手の意見や行動は変わるため、目的は大変重要な要素です。

一段深い論理の構成への注意

また、問題の理解・選択肢・価値基準の各要素が持つ論理の構成にも注意が必要です。

例えば「問題の理解」に関しては、次のように一段深堀した情報整理を行うことができます。

  • その問題を捉える際にどのような事実を把握しており、どのような事実を把握していないか
  • なんらかの仮説を置いているか、置いているとしたらどのような仮説か
  • 問題の理解のためにどのような論理展開を用いたか

つまり、一番大きな主張を構成している要素(子要素)についても同様の整理を行う必要があります。
選択肢や価値基準についても同様です。

結局は広い意味で「相手の論理の構成を理解する」ということに尽きますが、少し細かく考えるときはまずはこの3つに分けて整理してみると良いのではないでしょうか。

意図の重要性への注意

ここで一つ注意して確認しておきたいのが、「相手の意図」についてです。

ここまでの説明に当てはめるなら目的、判断基準・価値基準や論理展開などに関わります。

基本的には主張の背景にはなんらかの意図があります
例えば、相手に特定の行動を起こさせたい、自分が楽をしたいなどです。

そして、主張は意図に合わせた情報の取捨選択や強調などを経て構成されていきます。
主張に合わせて都合の良い情報だけが使われた場面を目にしたことがあるかもしれません。
それも意図があるからこそ発生します。

そのため、他者とのコミュニケーションでは「相手の意図や狙いを読むこと」は極めて重要です。

これだけで1つの記事を書きたいぐらいのテーマではありますが、注意事項としてご承知おきいただければ幸いです。

現実での活用方法の検討

ここまで相手の理解の把握について少し細かく見てきたので、次はどう活用するかを考えます。

言葉にすると小難しく感じるかもしれませんが、結局は「どのように意見を構築しているか見極める」ことに尽きます。人によっては普段から程度の差はあれ実施していることかもしれません。

ここから実用的に使いやすい表現を3つの形で考えていきます。

意見の構成要素に注目する方法

まずは素直に意見の構成要素に注目した場合は、次のような問いかけを設定するのが良いでしょうか。

『この人は何を根拠に意見を構築してるだろうか。問題をどう捉えているか。選択肢はどれだけ持っているのか。 何を目的にしているか。どういう理屈を組み立てているか。』

まとめて使うのは大変なので状況に合わせて一つずつ見極めていくのが良いかと思います。

相手の状態や根拠などを眺める方法

構成要素を分ける方法が合わない場合は、次のように考えても役に立ちます。

『この人は何を知っていて何を知らない状態だろうか。前提の中で確実な根拠と不確実な根拠はどれとどれだろうか。何か主張を前提とした価値基準で情報を取捨選択していないだろうか。』

どのような方法にしても、相手の主張の背景を考えさえできれば大丈夫です。

意図を捉える方法

相手の意図を捉えるには、そのままですが次の質問を頭の片隅に置いておくと役に立つでしょう。

『この人の意図はなんだろうか』

日常生活では、はじめに意図を推察し、その後背景を考えていくのが楽かもしれません

相手の思考が少しでも理解できれば役に立つはずなので、自分に合う方法を試してみてください。

上手くいかない場合とうまく解決するためにすべきこと

ご想像の通り、これらの方法は常に期待通りに役立てられるわけではありません。

例えば、相手の認識範囲や価値観あるいは論理展開をこちらが正しく理解できていない場合などです。

相手を適切に理解するためにはなるべく相手の考えや価値観を正確に理解する必要があります。

必要なアクションや注意点の具体例としては以下が挙げられます。

  • 不明点がある場合は明らかにできるような質問をすること
  • 相手に対する誤解をしないようにすること
  • できるだけ多くの可能性を考えておくこと
  • 間違っている要素があれば修正すること

これらは手段の一例であり、本質的には「相手の認識や価値観を正確に捉える」ための行動であることが重要です。

常にできれば苦労しませんが、現実にはなかなか難しい部分もあると思います。
利害が対立する相手なら論点をずらしたり、意図を掴みづらいようにされる場合もあります。

しかしながら、それらの点を踏まえても、普段の生活や仕事では頭の片隅に置いておくだけでもトラブル回避や相互理解を深める助けになる可能性がある点は改めて強調させていただければと思います。

まとめ

長くなってしまいましたが、簡単にまとめると「相手の意見も相手の認識の範囲から構成されているので、良いコミュニケーションを取るには相手の認識範囲と論理展開を理解しよう」という話でした。

実用的にはまずは相手の意図を推察しつつ、相手が知っている情報や持っている価値観を俯瞰するようにしてみるのが良いかと思います。

前回の記事と同様に、今回の話も根底にある考え方は経営学の「限定された合理性(あるいは限定合理性)」[1]です。「限定合理性」の考え方を知っておくと現実の様々な事象への理解が深まるので可能であれば一読をお勧めします。かなり重厚な書籍なのでより分かりやすく整理されている書籍などでも良いでしょう(前回記事と重複しますが[2]など)。

改めて考えるまでもなく、相手の思考を考えることは特別なことではありません。普段から当たり前にされている方も多いでしょうし、ドラマや漫画などでも思考を読み合う場面は良くあると思います。

そして実際に、相手の認識を考えることで意見の違いや問題の解決、あるいは相手と自分の選択肢の違いの見極めができるため、スムーズなコミュニケーションが取りやすくなる面はあると思います。

相互理解や建設的な議論への理解が広まり、円滑なコミュニケーションが実現される場面が増えることを願ってやみません。

参考文献

[1] ハーバード・A・サイモン著, 二村 敏子・ 桑田 耕太郎, 高尾 義明, 西脇 暢子, 高柳 美香訳, 『新版 経営行動』, ダイヤモンド社, 2009, p28, p128など.

[2] 入山章栄著, 『世界標準の経営理論』, ダイヤモンド社, 2019, p. 207.

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