教わるから学ぶへの思考の転換と学ぶための行動例

eye catch for change mind from receiving lecture to learn

最近の世の中を見ていると、学び直しやリカレント教育の議論が活発になるなど、社会に入ってからも新たに勉強することがごく当たり前になりつつあるように感じます。

これ自体は良い流れなのですが、学習する人の中には「教わる」こと、つまり誰かがなんらかの授業や講義を設定してくれることが前提にあるような人も少なくない気がして勿体無いと感じています。

なぜ勿体無いかというと、教わることは学ぶための選択肢の一つでしかなく、前提になってしまうと自分自身の持ちうる可能性を狭めてしまうためです。

学習側だけでなくサポートする側の関わり方も、学習者が受動的であることが前提であるように感じることがあり、両者共に学習は受け身ではなく能動的な行動であると考えた方が良いように思います。

そこで、この記事では、「教わる」ことが「学ぶ」手段の一つでしかないことを確認し、学ぶことが先にくるように思考を転換するための考え方を紹介します。同時に、教わることも含めて、学ぶために取りうる代表的な行動例を考えます。

教わることは学ぶための手段の一つ

「教わる」から「学ぶ」への思考の転換には、学習のゴールからの逆算をしてみるのが効果的です。

新しいことを学習することのゴールはなんでしょうか。

それは、自分自身の知識やスキルを高めることや、分からないことを分かる状態にすることです。
(※学習したものを役立ててはじめて意味があるという考え方もありますが、この記事の主題は学ぶところにあるので、この記事では自身の向上までを対象とします。そちらの考え方も大事です。)

自身の知識やスキルを高めることから考えた場合、取りうる行動例としては次のものがあります。

  • 授業・講義
  • 研修
  • インターネット
  • 読書
  • 動画
  • 問題集
  • 資格試験を通じた学習
  • 自分自身で試行錯誤する(特に誰も知らない課題の場合など)
  • 仕事を通じた学習
  • 人に聞く

一部重複もありますし、知識やスキルにも規模感の幅があるので必要十分なリストではありませんが、ゴールから逆算して考えるとざっくり考えただけでもこれだけのものが挙げられます。

書籍やインターネットも広い意味で誰かから教わっていると考えることもできますが、受動的な学習との根本的な違いは、何が必要かを自分で考え、自分で必要な情報を選択する必要があるところです。

本質的に必要なのは自分を高めたり「分かっていない」を「分かっている」状態にするためのアクションであり、研修や講義などを通じて「教わる」ことはその手段の1つに過ぎず、選択肢を狭めてしまっていることをご理解いただけるのではないでしょうか。

特に目新しいものがないと思われる方もおられると思います。その場合は効果的な学習のために最適な選択ができているか改めて考える機会であったり、自分の周りの人たちはどのようにしているかを考える機会としてなど、なんらかの形でお役立ていただければ幸いです。

学ぶ姿勢を持つことで得られるメリットとデメリット

誤解のないように補足しておくと、学ぶのが良くて教わるのが悪い、というわけではありません。

ここまで書いてきた通り、教わることは手段の一つでしかないため、能動的に学ぶ姿勢を持つことで、自分自身が成長するために教わることも含めたより多くの選択肢を持つことができる、というのが学ぶ姿勢を持つことで得られるメリットです。

一方で、デメリットという表現は適切ではないかもしれませんが、自分自身の情報量や想像力が制約になるのも事実です。但し、これは自分が知らない選択肢がある可能性を頭の片隅に置いておくこと、教わることも選択肢であることを認識しておくと大きなデメリットにはならないと思います。

学ぶ姿勢を持つことで得られるメリット・デメリットを簡単に箇条書きで整理しておきましょう。

【メリット】

  • 自分が必要だと思ったことを自分自身で決めて学習することができる
  • 教わることも含め、数ある選択肢の中から自分に合った学び方ができる
  • 自分が学びたいことであればモチベーションを保ちやすい可能性がある

【デメリット】

  • 何を学ぶべきかを自分自身で考える必要があり、手間と時間がかかる
  • 自分自身の情報量や想像力が制約になっていることを認識しておく必要がある
  • 自分が最適だと思っている方法が必ずしも最適でない可能性がある

要約すると、メリットは自分で必要なものを選んで自分で行動できること、デメリットは手間と時間がかかることと自分自身が制約になることいえそうです。

自分自身が制約になることに関しては、そのことを認識しておくことと、人の意見を上手く取り入れたり、可能性を広げてくれそうなものに触れられる体制を作っておくことなどが効果的です。

設定された講義や研修のメリットとデメリット

受動的な姿勢で経験する講義や研修も悪いことばかりではありません。
世の中には効果的な講義や研修はありますし、参加するだけで世界が広がったり、思いもしない人との繋がりを作ることができたり、自分自身が成長できる可能性もあります。

その辺りを踏まえ、設定された研修の学習面におけるメリット・デメリットも整理してみましょう。

【メリット】

  • 何を学ぶ必要があるか、どうすれば効果的かを自分で考える必要がない
  • 自分では思いつかなかった新しい世界が広がる可能性がある
  • 会社が設定した研修ならではの他の参加者とつながりなどができる可能性がある

【デメリット】

  • 自分が学びたいと思っていることを学べるとは限らない
  • 学びたいことであったとしても、自分に取って効果的な学習方法ではない可能性がある
  • 講義のレベルや質を選ぶことができない

要約すると、特に大きなメリットは何が必要なのか考える必要がないので楽であることと自分では思いつかなかった成長が得られる可能性、デメリットは自分に必要かどうか、自分に合っているかどうかが分からないことと言えそうです。

教わる姿勢を感じる場面

余談にあたるため後半に回しましたが、教わる姿勢を感じる場面についても記述しておきます。

「教わる」姿勢が前提になっていると感じる代表的な場面は、学校の勉強と企業の研修です。

学校の勉強の方は学生側が主導権を持ちづらく、学ぶ側としては仕方ない面もあると思います。
教える側も学生が自然に学びたいと思えるようにしたいとは考えつつも、受験や教えないといけないことの量といった現実の制約や社会環境もあり難しい状況なのではないかと推測します。

主体的な学びを考えている方々もおられますので、今後よりよくなっていくことを願っています。

後者の企業の研修では、「設定されたから受けてくる」になってしまうことが多いのではないかと思います。また、企業選びのときに「研修があるかどうか」が重視されるなどもあり得るでしょうか。

これらの可能性を考えたときに、与えられるものが全てじゃないこと、選択肢は他にもあることに気づいてほしいと考えたのが本記事執筆の背景でもあります。

自分で勉強できることや研修は学ぶ手段の一つにすぎないことを当たり前に当たり前だと思える世の中になると、世の中の学習への考え方も今より前進した状態になったと言えるのではないでしょうか。

学ぶ動機も大事

この記事では教わることから学ぶことへの思考の転換を扱いましたが、学ぶこと自体への動機も重要な観点です。本記事の主題ではないため詳細には扱いませんが、簡単に参考情報をご紹介します。

学ぶ理由としては例えば単純な興味であったり、仕事で役に立つ、テストや入試のためなど人それぞれ、あるいは対象や状況によって様々なものが考えられます。

何かに対する動機として一般的に捉えると、モチベーションに関する考え方が参考になるでしょうか。
この場合は心理学や経営学関連の書籍やビジネス書など多数の書籍があるので、自分の興味に合わせて考えを深める助けにしていただければと思います。

入り口としては例えば、心理学を広く扱う書籍としては『心理学 新版』[1]、経営学を広く扱う書籍では『世界標準の経営理論』[2]でそれぞれ一章を使って説明されていますし、[1]で文献として紹介されている『モティベーションをまなぶ12の理論』[3]のように一冊すべてで動機づけを扱う書籍があります。

学習の動機に重点を置いた考え方

また、特に学習の動機について考えを深めるにあたり、ご紹介したいのが市川伸一氏の『学習と教育の心理学』で紹介されている「学習動機の2要因モデル」[4]です。

このモデルでは学習する理由を(1)「学習内容の重要性」と(2)「学習の功利性」の2つの軸で考えます。(1)の「学習内容の重要性」は「学習内容そのものを重視しているか」、(2)の「学習の功利性」は「学習による直接的な報酬をどの程度期待しているか」を評価するもので、書籍中ではそれぞれの強さをもとに学習動機を6種類(「報酬志向」「関係志向」「充実志向」「実用志向」「自尊志向」「訓練志向」)に分類するような枠組みの例が紹介されています。

詳細は書籍の方をご参考にしていただければと思いますが、ここでは学習動機についてこのような考え方があること、動機にも様々なものがあること、自分がなんのために学んでいるのかを客観的に見直すために参考になる情報があることを知っていただければ幸いです。
(ちなみにこの本は教育心理学の書籍であり、学習・教育に関して考えを深めることができるので読んでみると面白いと思います。)

まとめ

本記事では、教わることは学ぶための手段の一つでしかないこと、そのことは学ぶというゴールから考えると分かりやすいこと、教わることが前提になると選択肢を狭めてしまうことをご紹介しました。
また、学ぶ方法として考えられるアクションについても考えました。

急速な社会状況の変化や技術の進歩の中にあって、学ぶことの重要性は高まるばかりです。

ただ学習の機会を提供する・されるだけでなく、学ぶ人が動機を持ち、何をどう学ぶかの選択に自分で主導権を持ちやすくなることやそのためのサポートも重要だと思いますので、本記事が皆様にとってより効果的な行動を考える一助になることを願っています。

参考文献

[1] 無藤隆, 森敏昭, 遠藤由美, 玉瀬耕治 (著), 『心理学 新版』, 有斐閣, 2018.

[2] 入山章栄(著), 『世界標準の経営理論』, ダイヤモンド社, 2019.

[3] 鹿毛雅治(編)『モティベーションをまなぶ12の理論』, 金剛出版, 2012.

[4] 市川伸一(著), 『学習と教育の心理学』, 岩波書店, 1995初版, 2011増補版, pp. 19-21.

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